あるパラレルワールドの世界です。その世界では、夕日が67億8928万回沈んだら世界が終わると、深く深く信じられていました。誰が決めたかなんて知りません。ひとびとが気にするのは、それが「どうして」そうなったかではなく、それが「いつ」自分の頭の上に降りかかってくるか、ということだけです。だからこそ、その世界に生まれたひとびとは、生まれたその日から自分の生きた日を指折り数え、それが67億8928万に満たなければほっと胸をなでおろし、あとはもうどうだっていいとさえ思うのでした。
どうせいつかは終わる世界ならと、ひとびとはそのときそのとき、考えられるかぎりの享楽と贅沢と堕落と搾取の限りを尽くしました。例え世界の終わりが自分の一生涯のうちに決して訪れるはずがなくとも、世界の破滅を思うと胸が痛くて眠れないからと言っては、彼らはいっそう享楽と贅沢と堕落と搾取に励むのです。生きたものの数だけ、たくさんの興亡と戦争と復興がありました。そして世界の仕組みとは関係のないところで毎日毎日飽きるほどに、誰かが死んで、誰かが生まれました。

そしてとうとう世界の始まりから夕日が67億89279635回沈んだ日――世界がおしまいになる日まで、あとぴったり1年を数えるときになって、ひとびとは突然、息をひそめたように静かになりました。土のある限りどこまでも広がるばかりだった興亡と戦争と復興は、その日を境にしんと静寂に包まれて、追われるように享楽と贅沢と堕落と搾取を続けていたひとびとは、いつしか自分のふるさとに帰ってはかたく閉じこもるようになった、世界が始まって67億89279635回目の日没の到来。ヒカルがケンヤに出会ったのは、誰が決めたかなんてわからないけど、そんな風に世界が限りなく終末に近付いた、ある夏の夜のことでした。



…というパラレルを考えて、でも長くなりそうだったから挫折しました。意味のわからない出だしですいません!!謙光でパラレルは今まで思いついたこと1回もなかったんですけど、Fiction Junctionのアルバムを聴いていて、今日ふいに浮上した物語だったので、ちょっと冒頭だけ気まぐれで書いてみた。

お話は、上記の世界のどこかにある国の兵隊で、毎日毎日戦争で人を殺していた少年兵・財前が、世界滅亡の1年前になって急に戦争が解除されたことで、どうしたらいいのかわからず居場所を求めてふらふら迷い込んだ霧ふく丘の村で、医者をしている謙也と出会い、惹かれていく、という流れです。どんなイロモノ!!ちなみに思いついたはいいけど、おそらく使わないであろう無駄な設定↓


・財前光(14)

どこかの国の少年兵。生まれた時から隣の国と戦争をしている自国しか知らない。10歳の誕生日と同時に徴兵されて、2年くらい前に初めて戦地に入り、人を殺した。以来数え切れないほどの「敵」の命を手にかける。67億89279635日、急に戦争の停止命令がくだり、軍属から解放されたものの、何をすればいいのか、何処へ行けばいいのかわからず各地をさまよい、小さな頃に絵本で読んだ世界の「最果て」を目指したすえ、謙也の村へ流れつく。

・忍足謙也(19)

どこかの国、霧ふく丘にある小さな村のお医者さん。明朗快活、どこまでもポジティブな金パドクター。世界滅亡まで1年を切り、他の看護婦さんもお医者さんもみんなどこかに逃げてしまって診療所はほとんどからっぽなのに、かまわず目の前にいる患者さんを救うことに全力を尽くす青年。滅亡を信じてるとか信じてないとかそういう問題じゃなく、ただ助けられるものが目の前にあるなら助けたいと考えている。村の子供たちからは「謙也くん」と呼ばれて親しまれている。

・白石蔵ノ介(19)

謙也の同輩で、幼なじみ。信じる人間は誰もいない、あがめる神の正体さえわからない、かつて大人たちが見得と体裁だけで開祖した教会の、ただひとりの神父。

・千歳千里(??)

財前の行く先々で現れる、謎の吟遊詩人。どこか浮世離れしていて、ところどころでものごとの真理をついた言動をする。今は謙也・白石の村の真ん中、無人の議事堂に入り込んで寝泊りしている。



村に着いたばかりのころは、世界滅亡まであと1年を切ってるのに人の命を救おうとがむしゃらになっている謙也を、「いまさら助けたところでなんになるんや」とハナで笑い飛ばす財前くんなんだけど、「金銀財宝が欲しかったり、英雄になりたいから助けるんやない。そんなん俺は興味あらへんし、ガラでもないっちゅー話や。ただ、出来ることがあんのになんもせえへんでほっといたり待っといたりすんの、俺、性に合わへんねん。なんたって、こん国でスピードスターっちゅうたらイコール俺ってくらい、セッカチなんでな!」って逆にあっけらかんと笑い飛ばされて、何も言えなくなっちゃったりするといいです。そして寝泊りする場所を提供してもらう代わりに、謙也の手伝いをさせられる財前くん。(ほんとは野宿でいいって言ってるのに、お人よしの謙也がムリムリ交換条件をたきつけたので、そういう条件になっている)
最初は拳銃や弾薬だけを握ってきた手では包帯も薬も上手く扱えなくて、失敗ばっかりしてウンザリする財前くんなんだけど、謙也の快活さ、前向きさ、優しさに触れていくうちに、知らず知らずに凍てつかせていた気持ちが氷解させられていくのを感じます。初めて人を殺して以来、不規則にフラッシュバックやトラウマに悩まされていた(しかし悩まされていたという自覚さえなかった)財前くんの寝床にも、本当のお兄ちゃんみたいに付き添って、なだめてくれる謙也のあったかいてのひら。頭が悪くて要領も悪いけど、優しくて裏表の無い言動。戦争に巻き込まれて片足を失った子供の義足作りを手伝えたことで、今まで散々殺してきたはずの自分に初めてかけられた、「おおきに」という言葉――。謙也が財前にくれるものは、みんな何気なくてささやかなものばかりだけど、騙しあい、奪い合うだけの国の中で育った財前くんにとっては、彼のくれる言葉や行動はまるで本で読んだ神さまのそれのよう。財前くんの中で謙也が特別な存在になるのにも、そう時間はかかりませんでした。たとえ残された時間が1年きりしかなくたって、謙也と出会えてよかった。謙也がこの世界にいてくれてよかった。静まりきって終わりを待つばかりの諦めに満ちた世界の中、ただひとり鈍感でバカで頭が悪くて、でも優しくてあたたかく、決して理由なく何かを諦めたりしないひと。そんな謙也を、好きになれてよかった。もちろん、筋金入りの天邪鬼かつ口が悪いのはこのパラレルでも変わらないので、そんなこと絶対に素直に口に出さない財前くんですが、謙也の幼なじみである白石や、旅の吟遊詩人である千歳との邂逅なども経て、幸せで、穏やかな時間が彼のそばを流れていきます。

そんな環境を激変させたのは、一発の弾丸でした。急な戦争の停止によって居場所を失った、かつての財前と同じような迷い兵士が村を訪れ、かつて敵国兵だった財前の姿を見つけたかと思うと、彼めがけて拳銃を発砲したのです。弾丸は、財前をかばった謙也の腹を貫きました。とめどなく流れる血に、茫然自失する財前。村の者たちに「誰か、医者はおらんか!」と怒鳴るけど、子供たちは言うのです。「謙也くんが、この世界で最後のお医者さまだったんだよ」、と。
白石や千歳の助けも借り、応急処置は済ませるものの、どうしたら謙也のことを救えるのか、謙也を死なせないで済むのか、考えても考えてもわからない財前。世界がおしまいになる日まで、このとき残りあと7日。でも、謙也が生きて笑ってくれているだけで、世界が終わろうとなんだろうと、もうどうだっていいんだ。数え切れないほどの人を殺した俺だけど、たったひとつでいい。誰が決めたかなんてどうだっていい。ただ、あんたを失いたくない。どうかどこにも行かないで。行かないで。

生まれてから14年、初めて年相応の顔になってぼろぼろに泣く財前くんを、謙也はぼんやりした目で見上げて、笑って、「なんや、お前もそういう顔、出来るんやん。その方がええで、しゃちほこばらんと、もっと素直にかいらしくなりや」、といいます。「うっさいアホ、死にさらせ」とぐしゃぐしゃの声で罵倒する財前くんの髪を、手をのばして撫でてやりながら、「悪いけど、まだまだ俺は死なれへんで。やりたいことまだまだあるし、67億8928万の最後の夕日が沈んでも、消えない光、ここにおるもん。神さまだかなんだか知らへんけど、きっとこんだけは予想外だったに違いないっちゅー話やで。――な、光」って笑う謙也。何も答えられない財前にいたずらっぽく笑って、疲れきって目を閉じてしまう彼に、財前はたったひとつ、神や世界を相手にしてでも諦めることのできないものの存在を、知るのです。




……こっから先は考えてません。(えー!!!!)いえ本当は、67億8928万回目の夕日が沈み、世界滅亡宣言がデマだった、と上書きされた瞬間に息を引き取る謙也と、かれに寄り添う財前くんが静かに涙をおとすところでお話を終わりにしようかなあ、と思っていたんですけど、謙光で死にネタはちょっと…ぶっちゃけ悲しすぎるので!立ち直れなくなるので!!(わたしが)最終的には謙也生還ルートがいいんじゃないかなーと思います。他力本願な物言いですいません^^財前くんが謙也を負ぶって、「いない」と聞いている医者を、閉じた世界の中に探しに出るのでもいいし、千歳あたりが実は神さまで、今までの経緯を「観察」した上で謙也を助けてくれてもいいかもしれません。実際千歳はほんとうに神さまか、もしくは「世界は67億8928万回目の夕日で滅びる」っていう伝説をずっと昔に「造った」一族の子孫か、そういうポジションにしようと思ってました。要は、オチとしては世界は滅びたりはしないのです。人間たちが自分自身で踊らされてただけ。ちなみに67億8928万は、現代世界の総人口の数から引用しました。

書きたかったのは、世界中がどんなに滅びる終わるとわめいたところで、いい意味も悪い意味でも自分の目で見た視界でしか物事を判断せず、動きもしない謙也くんと、そういう彼を神さまみたいに眩しく思っている財前くん。これはパラレルでもそうじゃなくても、謙光というカップリングがそういう色合いな気がします、あくまでぼたもちの中ではですけど。あとは、「謙也くんが、この世界で最後のお医者さまだよ」っていう子供のセリフと、「最後の夕日が沈んでも、消えない光、ここにおるもん」っていう謙也のセリフも言わせたかった。世界で最後のひとりになったとしても、諦めの悪い謙也がすき!そしてその謙也の足許を照らす光が、なんだかんだ財前くんであったらいいなあ。




なっげー!!!相変わらず語りすぎ。しかも趣味に走りすぎ。いまそうとう眠くて文章がいつもよりもっと壊滅的な自信があるので、寝て起きて恥ずかしくなったら、消えてるか改変されてるかもしれません…。なにはともあれ、ここまで読んでくださった方には心より感謝です!ありがとうございました!



あとがき


わくして3で発行した「The Everblooming World」の原点となった日記です。