ほんとは書くつもりがなかったのですが、昨日の日記の「黄泉がえり」テニスに関し、羽奏さんが拍手で「これで白石編があったら、泣いて布団にもぐるところだった」って言ってくれたので、以下、泣いてほしくて考えてみました。(モチ子うぜえええ!!^^)白石だったらちとくらかな。もういっそ謙蔵で、財前くんのポジションが白石で書いてもいいんですけど、謙光と並行しては考えられないので、やっぱりここはちとくらでいく。

千歳と白石の場合、「黄泉がえり」は千歳です。彼は四天宝寺高校を卒業して熊本へ帰るその足で、空港でのひったくりを捕まえようとして、共犯の男に刺されて死んでしまった、という設定。白石とはお互い好いた惚れたも言わない仲だったけど、お互いがお互いのことを代えがたく思っていて、お互いがお互いになんとなくそのことをわかってて、でもお互いがお互いに「自分からこいつに寄りかかったら負けだ」って思ってたふたり、というイメージです。これはモチ子の中でのちとくらというカップリング概念そのものである。
大阪の町で黄泉がえり現象が起こり始め、謙也が財前と共に「黄泉がえり」現象調査に奔走する、という物語の大筋の中において、白石はあくまで彼らの「親友」ポジションであり、謙也や財前をバックアップする立場、補佐役として各章にちょこっと登場する程度です。でも本当は、「黄泉がえり」現象が起こり始めた頃から心の底から千歳に「会いたい」って思ってて、せめてもう1度会えたなら、1回くらいは好きだって言ってやってもいいのに、なんて思ってる。だけど白石のもとには、何故か千歳は黄泉がえりとして戻ってはこない。どれだけ待っても、どれだけ物語が進んでも、白石はいつもひとりで登場します。謙也たちの前ではいつも泰然として、決して口には出さないけれど、自分が会いたいと思っても千歳が戻らない理由は、千歳の心が大阪に、ひいては俺のもとにないからなのかな、と考える白石。生きてたころから千歳はいつも自分からは大阪になじもうとせず、いつまでも「傍観者」のような立ち振る舞いが抜けなかったことを知っている白石は、そうとわかっていて彼を引き寄せることをしなかった、そうできないでいた自分の弱さとずるさを、千歳の死以来、無意識下で許せずにいました。それは完璧であることを自分に課している白石が最も厭う、後悔という名の感情です。
そんな風に自分を責め続ける白石の足が向かったのは、いつか千歳と「気が向いたら再戦しようや」、なんて言って別れたきりの、四天宝寺のテニスコートでした。千歳がいなくなって、死んでしまって、それっきり握らないでいたラケットを再び手に取り、誰もいないコートにサーブを打つ白石。いくつも、いくつもボールを打って、それらがみんな返ってくることなく転がって、やがて周り中がボールだらけになったとき、白石は初めてぽつりと一粒の涙をこぼします。千歳が死んでから、1回も泣いたことのなかった白石の、それは心の底から染み出した弱音、哀惜、悲嘆の感情。「ごめん…」、と呟いて泣き続ける白石の耳に、しかしカラリ、コロリと、聞きなれた下駄の音が近付きます。

「なして、謝ると?」

驚いて振り返った白石の前に立っていたのは、ふたりが別れた6年前のままの姿でやわらかく笑う、千歳本人でした。実は彼は本当は、20日前からとっくに黄泉がえっていて、白石に気付かれないよう、彼のことをじっと見守っていたのです。姿を現さないでいたのは、白石が「千歳に会いたい」と願った自分を知ってしまうと、彼のプライドが傷付くだろうと思ったから。「自分からこいつに寄りかかったら負けだ」って認識し続けながらそばで過ごす、というのが、生前の彼らなりの「妥協点」だったからです。そしてもうひとつは、千歳自身が純粋に、白石に会うのがこわかったから。ふたりは自分自身の素直な感情と向き合うことにとても臆病だという点で、とても似た者同士。彼らは昔から、お互いがお互いのことをよく知っていて、けれど同時にお互いがお互いのことを最も知らないふたりだったのです。けれど白石が「完璧」を捨てて見せた涙が、生きている間は超えられずにいた一歩を千歳に踏み出させたのでした。

千歳の姿を見て、「ごめん、ごめんな」、と、子供のように泣く白石。それを見て、泣くのをこらえたいびつな顔で笑い、「謝らんで」、とつぶやく千歳。ふたりはどちらからともなく身を寄せ合い、自然な法則のようにキスをして、「お前が好きや」「俺もったい」、とようやくの言葉を交わします。わかりきった、けれど同時にわからないでいた、違うけれども同じ気持ち。そして夜明けと同時に千歳は消え、ただ誇り高くあることだけが強さではないことを知った白石は、次の日からほんの少しだけ、今までとは違う白石蔵ノ介として歩き出すことを覚えるのです。



あとがき


「B面コレクション」の羽奏さんにささげたもの。このあとすばらしすぎるユウコハ編がすぐさま返されてきて、おったまげた覚えがあります…